SGC 現代アートコレクション Vol.5 谷原菜摘子 画家

第五弾は、京都市立芸術大学に在学中から自身の平面作品を黄金で額装したいという妄想を抱きつつ、一貫して絵画の制作に取り組んできた画家の谷原菜摘子。黒や赤のベルベットを支持体に、油彩やアクリルのほかにグリッターやスパンコール、そして金属粉なども駆使しながら「自身の負の記憶と人間の闇を混淆した美」を描く谷原は、同大学大学院に進み、博士号を取得します。在学中から旧五島記念文化財団の助成を受けてフランスのパリに研修滞在するなど、国内外での様々な展覧会やアートプロジェクトに参加してきた谷原は、京都市芸術新人賞、京都府文化賞奨励賞などの数々の賞を受賞し、大学院修了後もその勢いは止まりません。

今回の黄金の額縁は、谷原が制作の拠点としているSuper Studio Kitakagayaに同居しているメンバーの力を借りながら、「パンドラの匣を開けて眠りましょう」の作品に合わせて制作され、そして「シャワーを浴びて金になる」では、絵画に金箔を取り入れた作品にも挑戦しました。また、2023年の干支である卯をテーマとした作品に取り組み、待望の金を素材として使用する機会となったSGCアートコレクションの第五弾は、谷原独自の世界観をさらに広げる契機にもなりました。

パンドラの匣を開けて眠りましょう

「金色」は異質な存在であり、自然界には基本的には存在しない色です。私は金色の画材を、黒いベルベットの支持体に積極的に使用することで、過剰な煌びやかさと装飾性をこれまで演出してきました。

「パンドラの匣」では作品の額に金箔を使用しました。絵の具では到達することができない、艶やかな金の質感で彩られたオリジナルデザイン額は、真夜中に密かに行われる「見てはいけない禁断の遊び」の場面と合致しているのではないでしょうか。

シャワーを浴びて金になる

シャワーを浴びて金になる
シャワーを浴びて金になる

「シャワーを浴びて金になる」では、他でもない絵の中にいる「私自身」が徐々に「人間から金」に変容しています。実は画材としての金だけではなく、「金そのもの」がもつ美しさにも私は深く魅せられています。子どもの時は母の金の装身具を口の中に入れたり、体の一部だけを金や宝石にしたいと思っていました。

この作品では私自身の願望を作品に投影しています。
(谷原菜摘子)

アリスの世界から

アリスの世界から

SGCさんから今回のプロジェクトの肝である、「干支の兎」をモチーフとする作品制作を依頼された時、最初から漠然と「不思議の国のアリス」から触発された作品にしたいと考えていました。

アリスの荒唐無稽かつ不可思議な世界観は、自分の普段の制作の世界観に通じると考えてはいたものの、あまりにも有名な物語であるため、中々そこに踏み込む機会がありませんでした。

今回のプロジェクトを受けて、「アリスと自分の世界」の融合を目指した兎の作品の制作に至りました。

アリスに登場する動物たちと、そこから触発された独自のモチーフが作品には散りばめられています。
(谷原菜摘子)

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谷原菜摘子

撮影:福永一夫

谷原菜摘子NATSUKO TANIHARA

画家

1989年埼玉県生まれ。2021年京都市立芸術大学美術研究科博士 (後期)課程美術専攻(絵画)修了。2014年公益財団法人佐藤国際文化育英財団第24期奨学生、2015年第7回絹谷幸二賞、2015年京展・京都市美術館賞、2016年VOCA奨励賞、2018年京都市芸術新人賞、2021年第39回京都府文化賞奨励賞、2022年令和3年度咲くやこの花賞などを受賞。黒や赤のベルベットを支持体に、油彩やアクリルのほかにグリッターやスパンコール、金属粉なども駆使し、「自身の負の記憶と人間の闇を混淆した美」を描く。

©Natsuko Tanihara, courtesy of MEM