SGC 現代アートコレクション Vol.5 谷原菜摘子 画家

第四弾は、京都に生まれ、幼い頃から自然に親しみながら、仏像と対峙する機会にも恵まれた中で木彫の魅力に惹かれ、高校から彫刻科で学び、東京藝術大学大学院を修了後も木彫の制作を続ける彫刻家の三沢厚彦。2000年から制作を開始した「ANIMALS」シリーズは、私たちにも馴染みのある様々な動物をモチーフに、ほぼ等身大のスケールで樟の丸太から動物を彫り出し着彩した作品群。細部にまでこだわった緻密な彫刻でありながら、独特の表情を兼ね備え、現実と非現実とを行き来するような不思議な存在感があります。
美術大学にて教鞭をとりながら、全国で開催される個展にも積極的に取り組んできた三沢が、木の素材から他の素材への展開にも関心を持つ中で今回初めて触れることとなった金。その金を素材として取り組むこととした作品は、まるで2022年の干支である寅が進化を遂げたようなキメラでした。ユニコーンや麒麟などの架空の動物の制作にも挑む三沢の代表作の一つであるキメラを金にReplace(置き換え)した作品は、そのスケールに合わせて細かく練られた造形と、金ならではの存在感とが共存し、SGCアートコレクションの第四弾として凛々しく佇みます。

Replace - 黄金のキメラ

今回、純金製のキメラ制作のお話しをいただいた時、まず、はじめに考えたことはサイズの決定に必然性がある事と心理的、物理的価値が木彫作品のキメラと等価なものであること。そして、制作された純金のキメラがユニーク作品という位置付けであることだった。一般的に複製することやマルチプルに見られる性質とは異なる意味を持たせる必要があり、タイトルに「Replace」という言葉を敢えてつけたのもそういった考えからだった。

Animal 2020-03

樟、油彩
208×112×346cm

サイズの決定は木彫作品のキメラから金の量が算出され自ずとサイズが決定された。制作を始めるプロセスの中でサイズが比較的小さなものの視点や見え方が木彫のキメラとは著しく異なる事に対して、視線を小さなものを見据える視点に置き換え、頭部、身体、翼など各所のかたちや彫り、全体の繋がりなど入念に調整した。その結果木彫のキメラとは全く異なる存在感を纏ったキメラが出来上がった。「Replace 黄金のキメラ」は一体どんな場所に姿を現すのだろうか。
(三沢厚彦)

Replace 黄金のキメラ

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谷原菜摘子

三沢厚彦ATSUHIKO MISAWA

彫刻家

京都府生まれ。幼い頃から京都や奈良の仏像に親しむ中で、木彫の魅力に惹かれ、彫刻家を志す。高校、大学と彫刻科で学び、東京藝術大学大学院を修了。若いうちからロックやポップミュージックにも親しみ、音楽に対する造詣も深い。2000年から「ANIMALS」シリーズの制作を開始。同年より西村画廊(東京)で個展を開催。2007ー08年、平塚市美術館など全国5館で巡回し以降各地の美術館で個展を開催。主な受賞歴に2001年第20回平櫛田中賞、2019年第41回中原悌二郎賞。現在、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科特任教授。神奈川県在住。