SGC 現代アートコレクション Vol.1 金氏徹平 現代美術家

第二弾は、まるで都市で遊ぶかのように、渋谷のストリートから日本のグラフィティ、そして世界の現代美術まで、自らの表現を拡張し続けるアーティストグループのSIDE CORE。アーティストの松下徹と高須咲恵が2012年に立ち上げ、西広太志が加わった後も、既存の展覧会という形式にとらわれることなく、都市での表現のあり方を拡張し続けるアーティストたちが流動的に参加できる場を模索しています。そして、東京湾岸地域にあるスタジオを運営するなど、その活動の場を広げています。

ストリートアートを拡張していきながら活動を続けてきた彼らが、ストリートとは縁遠い金という素材と出会うとどうなるか。SIDE COREは、モチーフとしてしばし用いるネズミが干支となる2020年、SGCの商品の1つでもある金の干支にちなみ、光り輝く黄金のネズミの作品をストリートに潜ませる展覧会を企てました。ストリートと金とアートが交錯する、SGCアートコレクション第二弾が展開します。

golden city

都内の路上のどこかに「12体の黄金のねずみ」が置かれています。場所はどこかのビルの窓辺、監視カメラの上、美術館の塀の上などです。それぞれの建物や敷地の持ち主と話し合って設置していて、「ロケーションが面白い」「なるべく長く残る」「誰でも見られる」ことが設置した場所の基準になっています。

SGC 現代アートコレクション Vol.1 金氏徹平 現代美術家
golden city

そもそも街の中で面白い場所・物事を探すことが私達にとってのライフワークで、今回も私達が日常的に散策している道なりから場所を選んでいます。しかし近年の東京の街並みは変化が激しく、面白い場所が風景からなくなっていく傾向にあります。黄金のねずみの寿命は、街の変化と共にあります。小さな作品ですが、街の変化を観測する一つの基準点として機能していくと考えています。

また、現代において金は投資の対象物や装飾品として利用されていますが、金本位制では通貨自体が金の代用品であり、経済の基盤でした。本作では通貨を介さずに、金(ねずみ)とそれを置く範囲の(小さな)不動産を交換するという考えがあります。今は金のねずみの方が不動産より圧倒的に安いですが、将来もしこのネズミにアートとしての価値が高まれば、もしかしたら不動産を凌ぐかもしれません。よってこの作品は、不動産と通貨と金とアート、様々な価値を長期的な視点で競争させていくゲームでもあります。

(SIDE CORE)

NIGHT WALK

SIDE COREは夜の街を徘徊し、落書き、建築、オブジェなど街の中にある物事をアーティストならではの視点で鑑賞する「ナイトウォーク」を開催しています。

SGC 現代アートコレクション Vol.1 金氏徹平 現代美術家

今回はgolden cityの設置をきっかけに、この作品の鑑賞を含めたツアーを開催しました。西麻布の交差点で集合し、原宿までの間を普段通らないような裏道を抜けていくルートです。途中には「骸骨のように見える建築」「有名コピーライターの事務所」「世界で一番貼られているステッカー」などを鑑賞しました。すごく特別なものはありませんが、実際に歩き「ストリートカルチャーの視点で街を見る」ということがナイトウォークの重要な観点です。ストリートカルチャーの視点とはグラフィティライターが自分の絵を目立たせて描く場所を探していく視点であったり、スケーターがトリックをする障害物、気持ちよく滑っていける道路のカーブなどを見ていくようなイメージです。ナイトウォークは、そういう街を見る取っ掛かりを得ていくことで普段見えている景色が別のように見える、または街自体が表現のインスピレーションになるという体験です。街に設置されたgolden cityはこのように都内の隣接された場所に設置されており、これを巡って歩くことで新しいルートを描き出すような位置関係で設置されています。

(SIDE CORE)

SGC 現代アートコレクション Vol.1 金氏徹平 現代美術家

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SIDE CORE

2012年より活動開始。メンバーは高須咲恵、松下徹、西広太志。ストリートカルチャーを切り口にアートプロジェクトを展開。「風景にノイズを起こす」をテーマに、都市や地域でのリサーチをベースにアクションを伴った作品を制作。ギャラリーや美術館での展覧会開催の他に、壁画プロジェクトや街を探索する「ナイトウォーク」など野外空間での活動を展開。全てのプロジェクトは公共空間での視点や思考を転換させ、表現や行動を拡張することを目的としている。主な展覧会に「大京都芸術祭」(京丹後/2020)、「生きている東京展」(ワタリウム美術館/2020)、「Out of Blueprints by Serpentine Galleries」(NOWNESS/2020)
https://www.instagram.com/side_core_tokyo/

photo : shin hamada